代表者挨拶

胸部腫瘍臨床研究機構(Thoracic Oncology Research Group: TORG(トルグ))は、2004年に設立されたNPO法人であり、胸部悪性腫瘍(主に肺がん)に対し多施設共同臨床試験を遂行しながら、より良い治療の開発を目指す医師の任意団体です。設立以来抗がん剤や放射線治療を用いた新しい内科的治療の開発に積極的に取り組んでおり、これまで16本の臨床試験を完遂し、内外の学会と英文誌に公表して参りました。詳細は別項をご参照下さい。

2017年6月理事会幹部より役員退任の申し出があり、旧理事会の推薦および総会での承認を受けて、渡邉古志郎先生に続く第二代目理事長として7月1日より私こと岡本浩明が就任しました。旧理事は私のみ留任し、新たに12人の理事の先生に加わって頂き、新たな委員会も設けました。いずれの役員も日本の肺がん診療を牽引しているオピニオンリーダーの先生方ばかりです。TORGの新理事長として私をご推挙頂いたことは大変光栄でございますが、より良いがん治療を国民に提供することが本NPOの設立趣旨でありますので、その重責を全うできるよう会員の先生方と一致協力して、本機構を運営していく所存でございます。どうかよろしくお願い申し上げます。

従来TORGは比較的小規模な臨床試験を実施するグループでしたが、最近は症例数の多い比較試験を実施しております。また、公的研究費(AMED)を獲得してJCOG(日本臨床腫瘍研究グループ)と共同のインターグループ試験を実施中であり、さらには、現在注目されている免疫療法の大規模比較試験を先進医療として申請中です。

新しい抗がん剤が承認されると、用法・用量は添付文書に定められたものに従うことになりますが、他の抗がん剤との併用療法もしくは放射線治療や手術との合併療法については、至適な用法・用量は定まっていないため、市販後の医師主導臨床試験の積み重ねにより新たな治療法が確立されることになります。しかし肺がんに対する標準治療(つまり最適の治療を指します)の確立を単独施設で成し遂げることは困難であり、診療レベルが一定水準以上の施設が共同して臨床試験を行い、より良い治療の確立を図る必要があります。TORGは肺がん診療に優れた施設が一致協力し、多施設で共同試験を行いながら、より良い治療の開発に努めております。

海外で大規模な臨床試験の結果が公表されると、あたかも既に日本でも決着がついたかのように議論されることがありますが、内容は慎重に吟味される必要があります。欧米と日本では生活習慣や医療の仕組みが全く違う点、薬理遺伝学的な人種差が存在する点、日本と海外で承認用量が異なることが多い点などから、日本や東アジアの患者さんが参加していない臨床試験結果を無条件で鵜呑みにはできません。それでも最近の新薬承認を目的としたグローバル治験は一定数ほど日本の患者さんを含んでいるのですが、それだけでは不十分な証拠(エビデンス)と考えます。わが国でより良いがん治療を確立するためにTORGのような医師主導試験グループは、新薬承認後も継続的に最適治療法の開発を実施する責務を担っていると思われます。何もしないのは不作為の罪とまでは言いませんが、実行力のあるグループは率先して行うべきことと認識しております。

TORGは、上述のように臨床試験の立案と遂行を積極的に行っていますが、臨床試験や学会活動を数多くこなしている医療チームは、一般日常臨床においても高い診療レベルを示すことは、がん関係のみならず医学全般において、よく知られた事実です。もし肺がん患者さんやその御家族の方が、このTORGのホームページをご覧になられましたら、是非ともこのTORGに参加している医療機関に受診し、肺がん診療に精通しているTORGの医師に御相談されることをお勧めします。またTORGは一般市民、患者さんを対象として肺がん診療をよく知っていただき、正しい治療を受けていただけるように市民公開講座を定期的に開催しております。その節は当ホームページにご案内いたしますので、是非お誘い合わせの上多くの方にご参集いただきたいと思います。

渡邉古志郎前理事長から引き継ぎましたTORGを、さらに発展させより良い治療の開発に努めて参りますので、今後ともTORGへのご理解と関係各位のご支援、ご協力賜りますようよろしくお願い申し上げます。

2017年7月
第二代TORG理事長
岡本浩明

初代理事長 渡邉古志郎
任期:2004年9月 〜 2017年6月



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